ユダヤ人は我が子に、
【生活に困った時に何かを手放さないといけなくなったら、本は1番最後にしなさい。】
と教えるそうです。
知識は金貨に勝る。と、伝えて来たのでしょうね。
【読書】は自己研鑽の常套手段です。
時間も空間も超えて、ありとあらゆる【知識】を学ぶ事が出来ます。
人間が考え得る程度の悩みや問題の【答え】は、全て本の中にあると言っても過言では無いでしょう。
自己研鑽、自己啓発、膨大な知識を学べる魅力が、本にはあるのです。
…しかし、それだけでしょうか?
それだけならば、TORIOTTOに言わせればせいぜい値百両です。
千両、いや万両に値する贅沢と言えば…?
そう、【娯楽】です!
暇潰しですよ。ひまつぶし。エンターテイメント!
何という贅沢。何という無駄遣いでしょう。
しかし、贅沢と言える無駄にこそ、人は魅了されるのです。
人類が言葉を獲得して以来、物語は人々の娯楽の王様でした。
今では映像作品や漫画といった物でも、いろいろな物語を観る事ができます。
しかし、私がそう言ったメディアではなくて【小説】をオススメするのは、
【目の前で繰り広げられる物語を観る】のでは無く、【あなたの頭と心の中に拡がる物語を読む】メディアだからです。
文字はきっかけに過ぎないのです。
知識を得る為だけなら、今では観るタイプのメディアの方が向いているかもしれません。
しかし、あなたの内側で、想像力をもって世界を創造する楽しみを得るには、私は読む小説をオススメします。
あと付け加えるなら、小説の秘匿性も今の世相に合っていると言えます。
家から出れずに家族と共に過ごす時間が増えた人もいるでしょう。
皆で楽しめる作品なら良いのです。
しかし、【魔法少女〜☆♡】みたいな作品をいい大人が観た日には…白い目が…。
子供と一緒に観ると言う、涙ぐましい偽装工作(笑)をしたとしても、サービスカットのお色気シーンでも出てきたら、どんなにあなたが観たい作品であったとしても、子供の見る物じやありません!と消さなくてはいけなくなります。
しかし小説は、あなたさえクールな表情を崩さなければ、【痴人の愛】を読んでいようが、【悪徳の栄え】を読んでいようが、知的で素敵な人と、周りから尊敬の目で見られる事でしょう。
前置きが長くなりましたが、数ある本の中からTORIOTTOの独断と偏見で10冊!オススメの小説を紹介します。
not勉強。not自己啓発です。
純粋に娯楽として楽しめた作品のみを紹介します。
とは言え、本屋閉まってるじゃん。
という人の為にAmazonのリンクも貼っています。
断っておきますが、アフィリエイトの収入目的ではありません。
そう言う目的ならTORIOTTOは、もっと売れそうな…金持ち父さん?とか鬼滅の?などのレビュー記事でも書いていたでしょう。
Amazonのレビューも、書籍の売り上げも関係ありません。
私の心の琴線に触れた作品を!
まず一つ目!
【破産】嶽本野ばら
いきなり【破産】です。(笑)
家でずっとゴロゴロしていて、駄目人間になっちゃいそうな時に、
【俺が本物の駄目人間を教えてあげますよ。】と美味しんぼの山岡さんが持ってきてくれそうな小説です。
半分実話?と言うキャッチフレーズの通り、作者がモデルであろう主人公が、まあ笑っちゃうくらいダメダメです。
破産寸前の彼が、如何にして切り抜けるのかと言うストーリーなのですが、Amazonの評価は賛否両論。いや、むしろ低いです。
TORIOTTOが思うに、ラストの解釈で賛否が違ったものになる様です。
本で学び、知識を求める読書に慣れた人は、答えや解決が無い作品に【中身が無い!】と不満を感じてしまうのでしょう。
ですが、小説の世界ではこの様な作品はゴロゴロしています。
想像力をはたらかせて、この登場人物は何を現しているのか?このシーンは何の寓意なのか?と思考にふけるのも、小説を読む醍醐味と言えるでしょう。
二つ目!
こちらも明確な結末は無い小説です。
一応主人公らしき人物は出てきますが、ある一夜に、いろいろな場所で起きる出来事を描いた作品で、群像劇に近いと思います。
村上春樹氏の作品は、窓際で上半身裸でサンドイッチ食べてる様ないけすかない男が出てきて、また、そんないけすかない人が読んでいそうなイメージもあって、なかなか手が伸びなかったのですがこの作品は違いました。
いろいろな人生を生きる登場人物と、夜と言う時間の描写の魅力の虜になってしまい、今でも何度も読み返してしまう名作です。
今更私が高評価する意味も無いくらいに有名な作者ですが、村上春樹が苦手な人にこそ、是非読んで欲しい作品です。
三つ目!
【命の後で咲いた花】綾崎 隼
恋愛ミステリーと言うジャンルの作品です。
綾崎隼氏の作品は、繊細で美しい描写が持ち味で、表紙の綺麗なイラストともとても良くマッチしています。
物語としては、同作者の【初恋彗星】をオススメしたいのですが、恋愛ミステリーとしては本作品の方が良く出来ています。
もちろん謎解きだけでは無く、恋愛小説らしい切なさや涙するストーリーもあり、エンターテイメント性の高い良作だと思います。
難しい文学臭さも無く、素直に読める作風に好感が持てます。
このジャンルを始めて読む方にもオススメです。
この表紙でジャケ買いしても、決して後悔はしないと思いますよ。
四つ目!
【月だけが、私のしていることを見おろしていた。】成田 名璃子
こちらも恋愛小説です。少しミステリーの要素もあります。
TORIOTTOは他の女性作家の小説も読むのですが、特に女性が主人公の作品の場合、どうしてもカッコいい女性がカッコつけているぜ!な描写が鼻につく事が多いのです。
が、本作品は全くそう言う事も無く、繊細でさらっとした筆致で描かれる等身大の女性が主人公です。
この人物は、いわゆる【男性が思い描く女性キャラ】でもありません。
作者の技量のなせる技か、読み手が私の様な男性でもそれを忘れて主人公になってしまった様な感情移入が出来て、最後まで一気に読めてしまう小説です。
切ないストーリーが恋愛小説ファンの心の琴線にも触れると思います。
五つ目!
【ぼぎわんが、来る】澤村伊智
第22回日本ホラー小説大賞受賞作です。
ホラーが キます…。
家で引き篭もっている時こそ読んで欲しいですね。
訪問者が来ても絶対に出たくなくなります。
ぼぎわんと言う響きが絶妙です。
なんだ?!こいつは!と思ってしまうモンスターが出て…来る!
正統派ホラーがお好きな方には是非オススメです。
六つ目!
【火車】とは古から伝わる妖怪で、悪業を重ねて死んだ者の葬式や墓場から死体を奪うのだそうです。
また正体は猫の妖怪であるとも言われ、年老いた猫が火車に変化するとも言われています。
この作品には一欠片も妖怪は出てきません。
現代が舞台です。
ですが間違い無く全編通して【火車】を描き切っています。
こう言うものが、妖怪と言う奴なんだな。とゾッとさせてくれる名作です。
七つ目!
【妖怪】と言えばこの人です。京極夏彦。
水木しげる氏も大絶賛したという、彼の作品の中で、【京極堂シリーズ】又は【百鬼夜行シリーズ】と呼ばれるシリーズの最初の作品です。
戦後間もない時代背景と、怪しげな噂から始まる事件の絶妙な世界観は、さすがは厨二病を極めた御仁と言えるでしょう。
このシリーズの中では【魍魎の匣】が有名ですが、この作品を読まないと、魍魎の匣の半分も理解できないでしょう。
それ程までに最初にして本質を突いています。
ミステリー小説としてのエンターテイメント性も高くてとても面白いです。
人間の脳と言う器官の、強さと儚さが半ば強制的に理解させられる感覚は、読後の世界の見え方が変わるくらいの経験をさせてくれます。
キーワードは、
【この世には 不思議な事など何も無いのだよ。】
です。
八つ目!
同作者の作品なら映画化もされた【悪の教典】が有名ですが、オススメするなら断然こちらです。
未来世界を描いたSFファンタジーものなのですが、さすがは貴志祐介!実に生々しい描写で魅せてくれます。
物語を構成する要素である、世界観、表現力、キャラクター、どれを取っても一級品です。
悪鬼と業魔の描写は、VRやAR等今の情報化された世界の脆さと恐ろしさも思い出させてくれました。
個人的には化けネズミの存在理由に作者の創造力の集大成を見る事ができると思います。
九つ目!
え?ライトノベル?!と思った方もいるでしょう。
正式に出版されたライトノベルどころか、原作は自主制作の同人作品として出された物語です。
サウンドノベルと言うマニアックな形態なのに10万枚以上の売り上げを記録したメガヒット作品で、一時期大いに話題になりました。
後に小説版も出版され、こちらも累計80万部も売れたそうです。
何故そこまでヒットしたのか…?
一言で言って怖い!からです。
各話毎に、最初のポップなオタクノリのほのぼのしたストーリーから、後半一気に恐怖に叩き込む描写は見事と言えるでしょう。
いや〜最初舐めてました。
一級品のホラーの描写と、いい意味でB級品のホラーの良さが合わさった名作だと思います。
アニメ化もされましたが、R指定がつきました。
更にこの作品を参考にしたのでは?と思われる事件も起きてしまい、放送中止になった回もあります。
小説の描写はアニメよりも更にグロいので、可愛い絵柄に油断せず、お子様の手に届かない所に保管して下さい。
TORIOTTOも最初の雰囲気に騙されて、油断してヤられました。
欠点はというと…長いです。
読むのにとても体力と精神力と時間が要ります。
ですが、引き篭もって時間を持て余している人にはオススメです。
偏見を持たずに一度は読んでみて下さい。
ラスト!
京極夏彦先生からもう一作品です。
皆さんご存知【四谷怪談】の一つ、【お岩さん】のお話です。
最初に言っておきます。
【これは恋愛小説です。】
伊右衛門うらめしや…。
これほど切ない【うらめしや】を描いた作品をTORIOTTOは他に知りません。
もしご存知なら教えて欲しいです。
怪談奇談の類はこの様にして生まれるのかなと思います。
枯れ尾花も、夢の跡も、誰かがそこで必死に生きた名残なのだと認識させられる作品です。
いろいろな想いや心が消え去って怪しい噂だけが残ったとしても、彼等の魂は消え去ってはいないのです。例え誰もわからなくなったとしても。
同作者の【巷説百物語】と迷ったのですが、やっぱり好きです。この作品。
嗚呼…うらめしや。
以上で10選です。
出来る限りネタバレにならない様に書きました。
【羆嵐】、【消された一家】、【戦争は女の顔をしていない】など、名作であったとしても実際にあった出来事を描いた作品は、今回の趣旨とは違うと思いましたので紹介していません。
また同様の理由で、古典と呼ばれる物も外しました。
本当に今、純粋に楽しめるエンターテイメントと言える娯楽小説のみを選びました。
個人的な好みで、ミステリーとホラーの要素が入った作品が多いですね。
娯楽としての読書は、得るものよりも奪われるものの方が多いかもしれません。
それでも蠱惑的な魅力に人々は夢中になってしまうのです。
読書とは、あなたの命の時間と睡眠を奪うインキュバスであり、
あなたの財力と体力と、何より心を奪うサキュバスでもあるのです。
そんな魔物達をあなたの寝所に偲ばせてみませんか?